金沢「立喰い鮨 優勝」(令和4年9月訪問)

金沢という街は、観光名所がどこもコンパクトにまとまっており、600円のバス1日乗車券さえあれば完結する旅行者にとっては夢のような手軽さで、さすが「槍の又左」前田利家公!すご〜い、センスある〜。

とは言っても、それだけで石川県を知ったつもりになっては非常にもったいない。有名な温泉、素敵な宿がたくさんあるのだから、主要なところを回った方はどんどん車に乗り換えて石川を堪能してほしい。その第一歩として、金沢駅から車で20分ほどに位置する「金沢港」にある「立喰い鮨 優勝」を紹介したい。

野々市の名店「すし処めくみ」がプロデュースし、「居酒屋87」の運営会社と能登の漁師がタッグを組んだ「石川アベンジャーズ」というべき熱い組み合わせで生まれたお店。高級店に卸されるようなSランクの魚ではなく、A・Bランクの魚を仕入れて使うことで漁業による地域活性や漁師の収入増加という好循環を生み出すことが目的のひとつ。石川、福井、宮崎あたりは近年このような未利用魚=雑魚をうまく扱う生産者が多いイメージで、締め方の技術進歩、飛行機や新幹線を使った輸送の効率化で朝獲れの鮮度を東京でも食べられるようになったことで非常に注目度が高い。

タネと価格が良い意味で釣り合っていない
飲み物は全て500円(税込)

コースは9カン+玉とお椀の「おまかせコース」3000円(税込)と、ウニが盛り込まれて内容が少しグレードアップした11カン+玉とお椀の「スペシャルコース」6000円(税込)の2種類。ドリンクは場所柄、車が必須でノンアルコールビールを注文してる人が多かった印象だが、アルコールも全部500円で良心的。

ウニが地物ではなかったので3000円のコースを選択。消費者側には安く提供され、まさにWIN-WINな関係性とは言っても、肝心なのは味。優勝したい!

金沢の赤イカからスタート。柔らかく甘みが強く、とても美味しい。

能登のヒラメも良い感じに脂がのっており白身の旨味がたまらない…

金沢の甘エビ。プリプリだけどちょっと漬かりすぎてたかも。

富山の白エビ。口にフワッと広がる風味が抜群。

北海道のイクラちゃんと能登のバイ貝。バイ貝のコリコリの食感がたまらない、塩がやはり合う。

この日の1番!カジキマグロのヅケ。富山ではよく昆布締めにして食べるものの、なかなか東京では出会えないカジキ。少々繊維質なため人気がないと想像するが、噛めば噛むほど味わい深く本当に美味なので、こうしたコンセプトのお店でしか出会えないというのがもったいない。

大間の中トロとあん肝の手巻き。確かに素材はワンランク落ちるものの、脂ブリブリのトロよりも赤身に近いモチモチ食感のマグロが好きなので、満足。和牛とかでもそうだけど日本におけるSランク食材の定義って脂ノリ勝負みたいなところがあってあまり理解できない。謎の信仰心を感じるんだよなぁ…

ここでひと通り。佐賀海苔たっぷりのお味噌汁、安心する美味しさ。玉はカステラ風のデザートタイプです。

追加で気になったタネを2つお願いしました。まずは岩手のイシカゲ貝。イシガキ貝と呼ばれることもある貝。夏が旬でトリ貝に似ており昔は代用として使われていたようだが、こっちの方が希少で味も食感も良いため市場では高値で扱われる貝のひとつ。岩手県は陸前高田市の広田湾が国内唯一の養殖産地である。あそこは牡蠣もブランド化したし、相当な好漁場なんでしょうね。ホタテに近い甘みを感じつつ、食感も楽しめるハイブリッドな特長を持つ印象。

最後は能登のヒラメのエンガワ。コース冒頭の日ラメが非常に美味しかったのでエンガワも予想通り、凝縮された味わいで素晴らしい筋肉質。噛めば噛むほど美味しい。

というわけで、通常のおまかせコースに2品追加してお会計は4200円。大満足でこれは完全に優勝!!Sランクじゃなきゃ味が落ちるという幻想を作っているのは消費者側であるということが改めて分かった。

そして1点、こちらはあくまで「安価な立ち食い寿司」という業態であり、「めくみ」の分店ではないということは忘れずに訪れるべき店。執筆にあたって各所の口コミを見たところ、どうもそこを履き違えた自称グルメが溢れかえっておりびっくりした。確かに職人の手際は良くないし、シャリの握りが甘いなどといった指摘はもっとも。混雑時のタイムマネジメントなど改善点も多々あるので現状で「金沢いくなら絶対おすすめ!」と自慢はできないが、タネのポテンシャルが圧倒的なので今後が非常に楽しみなお店!漁師直結の特性を最大限に活かしてほしい。

魚市場の中でこの価格でいろんな魚と出会えるという部分に価値を見出せない方は、東京の客単価40000円のカウンター寿司でふんぞり返ってれば良いのでは?もしかして、スシローとかくら寿司でも「シャリがどうこう、普段俺が食べてる鮨というのは…」って語るタイプ?勝手にハードルを上げて粗探しをするような客はお店も求めてないでしょうから、わざわざ車を借りてまで食べに来なくて良いと思うのであった。

おすすめ度:
予算:3000〜7000円
住所:〒920-0332 石川県金沢市無量寺町ヲ52−番地
電話番号:090-1390-8787
アクセス:金沢駅から車で20分ほど「金沢港いきいき魚市」内
予約:可能。土日は予約しておいた方が無難。

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