京都は鱧やすっぽんのイメージは強いものの、あまり「京都で寿司!」っていうイメージは薄い街かもしれません。しかし、北部には宮津や舞鶴、間人といった好漁場を持っており、本来魚がうまい街ではありますし、ミシュランの星付きの寿司屋も複数ありますので、そこまで不毛の土地でもありません。
そんな京都で僕が全幅の信頼を寄せるのが京都市役所前にひっそりと店を構える「寿斗 ふかがわ」。深川大将は地元の生まれで、古来より京都で培われた寿司の技術を継承し、現代の寿司に適応させる研究者肌の職人です。10席ほどのカウンターでいただく寿司はどれも独創的かつ芸術的で計算され尽くした味わい。
ノドグロからスタート。バターの優しい味がノドグロのしっかりとした身に染み込み全てが浄化される。伺う前にカフェをハシゴしてカフェインやられになっており、食べられないのでは…とか危惧していたのですが杞憂に終わりました。
白子はポン酢と大葉でさっぱりいただきます。濃厚な脂感がささっとリセットされました。
ツマミの珍味3種盛り。酒が進むコノワタにカラスミ。深川大将のこだわりで日本酒は田酒。京都の地酒あったほうが観光のお客さんは喜ぶけど、自分の握りとは合わないということで入れていないらしい。こだわりですね。
シラウオは生姜とポン酢ジュレに柚子皮をひと振り。
肉にしか見えないトロの脂を包み込むネギとゴマの大仕事。
雲子は見ての通りフワッフワ。何もいえねぇ美味さ。
クルマエビと赤身のヅケ。プリップリで隠し包丁の切れ込みに染みる醤油が実に良い。
コハダがでかい。だからと言って味が大ぶりでなく、締まり方も絶妙。
ウニは塩とわさびになんと海苔の佃煮。軍艦にした場合は海苔が最初に舌に触れて良くも悪くも海苔の美味しさに支配されるが、この握りだと海苔の味がウニと絡むタイミングがズレるのでまた新しい風味が発見できます。計算された味の順番、面白い。
京都の寿司の伝説として名高い「松鮨」で文豪たちが好んで食べたという春子と千枚漬けを組み合わせた「川千鳥」という握りがあるらしいんですが、そこから着想を得たのがこの握り。なるほど非常にさっぱりと食べられてコースの終盤に出てきても軽く食べられる上に食欲が増す気がします(ただの食い意地)。こういう細かい部分で京都の寿司を継承されているんだなと実感。
出汁の香る玉も梅とわさびでさっぱり。
最後に満を持して登場する穴子は口に入れた瞬間に溶けるのでお腹に余裕がなくても無問題です(笑)。
お会計は1人お酒込みで9,800円。ランチの握りのみのコースであれば、5,500円から京都と江戸前の技術が融合した独創性あふれる他にはない寿司を楽しめます。ひたすら向こうから勝手にウンチクを垂れる店主とは違い、こちらから色々聞くとこだわりや産地のことをたくさん教えてくださいます。さながら「寿司学」の授業を受けたようなまた別の満腹感も得られるので色々お話を伺ってみてください。
住所:〒604-0982 京都府京都市中京区松本町576-2
電話番号:080-5349-6811
アクセス:京都市役所駅11番出口から徒歩7分程度。
予約:ランチ、ディナーともに必須。